『さらい屋五葉』(オノ・ナツメ)

 冴えない侍・政が目端の利くチンピラ・弥一に導かれ、悪事に足を踏み入れていくお話。

 悪事とは言いつつも、その悪が本当に悪であるかという哲学的な葛藤を交えつつ時間は動いていく。
 政はとことんまでコンプレックスの塊として、私たちと同じ弱い人間として劇中を動いている。世間的な倫理と自らの倫理観と「向こう側」の倫理間とのギャップに悩み、入り込んでいいものか悪いものか。目の前の扉を開き、中に入っていいのかどうか。至極普遍的で、かつ非日常な風景を描き出している。

 要素としては「巷説〜」とまったく同じものだけども、この人の絵でできあがるものがちょっと違うだろうという期待を抱きつつ、次巻にも期待。