ヤングサンデー『白兵武者』

 『白兵武者』についての前知識

 原案蝶野正洋・作画石渡治。時は中世、世は戦国。飢えで母を失った幼子・蝶野正之進は、嘉平夫婦とともに平穏無事な日々を送っていた。陶晴賢の軍勢が攻め入ってくるまでは………
次々と焼かれる家々、襲われる村人たち、そして、殺されゆく育ての父と母……惨劇を前に立ちつくす正之進へと迫る兵達!だがその時、突如現れたひとりの僧侶。素手で鎧武者を秒殺した猛き男…その名は、白兵武者!
白兵とともに但馬へと旅立つ正之進の運命や如何に!?
蝶野正之進の戦国武闘伝説が今、始まる!

http://www.youngsunday.com/rensai/comics/hakuhei.html 参照。

 新日本所属の蝶野正洋が原案です。主人公は蝶野正之進。何か考えたアナタ。気のせいですので考えないでください。そんなことは些末な事柄です。
 要は「if〜もしも戦国時代にプロレスラーが居たら」です。そこまではいいんですよ。問題は味方の「白兵」の名前が天山やら橋本やら辰波やら坂口やらを「オマエもうちょっと変えろや」っていうぐらいストレートに使い回し(心持ち変えてはいます)、お約束の様に敵にも白兵的な素手の人殺しが出てきたと思ったらその首領が猪木だったってのはやりすぎだろう蝶野。立ち読みした時吹いたじゃないか。あとネタバレになるけど味方の新日本勢のほとんどが死んだ時(殴り殺される天山)・蝶野が実は猪木の息子だった時など、覚悟して立ち読みしないと恥をかきます。

 さて、本題はここからです。蝶野原案ってだけで素敵な話であることは間違いないんですが、ヤングサンデー編集部の決定的な間違いは「作画を石渡にしたこと」です。ここに関しては「先に作画が決定していたのか」どうかわからないので微妙な話になるんですが、サー・石渡と言えば『B・B』『ラブ』『パスポート・ブルー』『HAPPYMAN』をものした偉人です。どんな素材を料理させても無常で無情な無上の話を作ってしまうという、当代きっての業の深さを誇るキチガイにこんな素敵な材料を渡したらどうなるかぐらいわかってたはずでしょうに。
 石渡先生の業が余すところ無く発揮された結果、「蝶野正洋原案」という売り文句は既に有名無実化し、ただの「いつもの石渡治の救えないストーリー」になり果てました。
 石渡は絶対女性に関して屈折しまくったナニかを持ってると思う。『HAPPYMAN』で千葉さな子を狂わせて、『ラブ』では主人公を地獄の底に叩き落とし(死ぬほど後味悪い)、『パスポートブルー』では少年誌にあるまじきストーリー展開を見せ、『B・B』は言うに及ばず。そんな石渡先生の作品でありますので、『白兵武者』についても同じです。フェミニストな人は見ると発狂してしまうのでお気をつけ下さい。