『椿山課長の七日間』(浅田次郎
 重松清が書きそうな話だなあと思いました。新聞に連載されてて人気ある作品らしいんですが、サラリーマンが毎日追ってたらそりゃハマるよな、という感じ。個人的には今まで読んだ浅田次郎の作品の中では下の方です。文句のつけどころが無い程上手く作ってるんですが、構成の巧さに比して心情の描写と導きがついて行ってない気がする。

 『沙高棲綺譚』(同上)
 短編ウマー。
 他人に明かせない話を誰かに聞いてもらい、聞いた者も他に漏らすことは許されないというサロン「沙高棲」。刀剣鑑定師が語る〈あってはならない刀〉。精神科医師の話す〈聞こえない声〉。歴戦のカメラマンの持つ〈名作〉が持つ曰く。年老いた庭番が呟く〈庭の作り方〉。ヤクザの大親分が振り返る〈切っ掛け〉。個人的には「小鍛治」が好きです。ちなみに今まで見た刀で一番惹かれたのは上杉神社宝殿にある一文字助宗。清廉で頼りなげな、透明感のある刀。至極武人的なイメージのある景勝があれを持ってたってのがまた。

 『UNKNOWN』(古処誠二

 面白かったです。古処誠二は『ルール』しか読んだことが無かったのですが、それぞれの舞台の持つ限定環境をちゃんと利用して、尚かつそこに存在する人々の葛藤やら辛さやらを伝えようとする作家だなあと思いました。真っ当。