『イリヤの空』(1〜4)(秋山瑞人
 ラノベのカリスマ。私が秋山作品を読むのはこれで二作目(初体験は『猫の地球儀』)。
 崩される為に積み重ねられる日常と非日常。もの凄くテンポ良くて笑えて感情移入できた一巻を読んだ時点で、最終的に大ダメージを受けることは覚悟しました。まあ、それがわかるだけ親切な作家だとも言えます。
 さて、英雄願望を抱いた経験がある方は多いと思います。やれ「俺はタダモノじゃない」、やれ「どんな状況でも対処できる」、やれ「『キミは世界の敵だ』と顔面神経痛のコスプレイヤーに言われたい」。若気の至りならいいですが、今現在そう思ってる貴方は今すぐ書店に走って『イリヤ』を全巻買ってきてください。そして読んで下さい。
 いいですか?4巻途中までの主人公、

 それが貴方です。思い知っとけ。

 マストキャラは榎本。榎本に始まり榎本に終わる。

 以下ネタバレ含み

 



 










 サイカノを読む前に読みたかったな、と思う。向こうがシュールギャグ漫画なだけに、物語の基盤となるところで連想してしまうのがサイカノ、ってのはプラスにはなりませんな。
 主人公の浅羽がとことん無能で無個性でヘタレなのは良かった。浅羽は貴方であり私であり貴女なのですね。その分受けるダメージも激しい。一撃でHP赤くなります。
 ところで、この作家の最大の長所はとことんまで酷い話をとことんまで酷く書ける点だと思います。最終的に救われてない。どう贔屓目に見ても救われてないと思う。『猫の地球儀』の幽とかもそうだったけど。「救えない話」をちゃんと「救えない話」として書いてそれでもハッピーエンドマニアの私が面白いと思う、ってのはやっぱ力量なのかな。覚悟させる助走距離のある無し。

 個人的には「傑作」だけど「名作」じゃない。なぜなら多分もう読み返さないから。