『眠れぬ真珠』(石田衣良)

  45歳の職業芸術家と28歳の非職業芸術家の恋愛話。
 なにかのインタビューで石田せんせぇは実際知り合った女性に恋愛話を聞きまくると言っていたのを読んだ記憶があるんですがいいなあその趣味。羨ましくて仕方ないよ。恐らく、琴線に触れるお話が聞けたのでこの物語が出来たんだと思います。いや本当かは知らんけれど。

 私の好きなタイプの読み物っていうのははっきりしていて、簡単に言うと シアワセナモノガタリ でした。
 特に恋愛小説においては甘々で読み終わったら満足満足、という、一生ラノベ読んでりゃいいんじゃねえのみたいなのが好きで。それは単純にブルーになりたくなかったからなんですが。

 いやでも、今回これ読んでちょっと変わった。人間と人間がお互いを大事にしあった場合、血の涙を流しながら選ぶ選択の緊張感、真摯さ、美しさってすげえイイ。せつねぇ。これから読むものとしてこの手のお話をわざわざ選んで読むとは思いませんが、ちと枠が広がった感触があって個人的に当たりました。勿論、その選択が納得できる、美しいと思えるぐらいの背景を描いた石田せんせぇの勝ちなんでしょうが。

 でもいいなあせんせぇの趣味。ネット関係でそれなりに聞けてるけど、ツラつき合わせて聞く場合の情報量には勝てないねぇ。

 そいやエマも終わったけど、あれもせつなかった。淡々とした空気感がちと刺さる。決して癒し系ではない、息遣いが聞こえてくるかのようなリアリティ。